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中小企業経営承継円滑法

 旭川市内で建設業を営んでいる者です。将来的には専務取締役である長男に経営を継がせたいと思っております。
私には、長男のほかに2人の子供がいることから、いわゆる遺留分との関係で問題が生じるのではないかと悩んでいたところ、中小企業の経営承継を円滑に行うための法律が制定され、遺留分についての特例が定められたということを聞きました。具体的には、どのような制度なのでしょうか。(Sさん・58歳)

 現在、中小企業の経営者の平均年齢は約58歳であり(中小企業庁統計)、道北地方における経営者の高齢化は、より一層顕著です。しかしながら、早い時期から事業承継について考えておられる経営者の方は少ないのではないでしょうか。このような中、円滑な事業承継を目的として、平成20年10月1日から「中小企業に おける経営の承継の円滑化に関する法律(以下、「経営承継円滑法」という)が一部施行されました。

この「経営承継円滑法」は、
①相続税の課税の特例 
②遺留分に関する民法の特例 
③金融支援

の3つの柱から成り立っています。今回は、この中の②遺留分に関する民法の特例について、そのポイントを概観してみましょう。

そもそも、遺留分制度とは被相続人が有していた財産の一定割合を、最低限の取り分として一定の法定相続人に保障する制度です(民法1028条以下)。
しかしながら、民法の規定に従った場合、遺留分をめぐる紛争が生じたり、自社株式・事業用の資産が分散してしまったりすることによって円滑な事業承継が阻害されるという不都合がありました。

そこで、「経営承継円滑法」においては、まず、遺留分減殺請求を封じ、自社株式等の分散を防止するために、①後継者(経営を承継する推定相続人)と非後継者は、後継者 が経営者から生前贈与等によって取得した自社株式等について、遺留分算定の基礎財産 に算入しないという合意をすることができることが定められました(除外特例)。

また、株式価値の変動による不都合な結果を回避するために、②後継者と非後継者は、後継者が経営者から生前贈与等によって取得した自社株式等について、遺留分算定の基礎財産に算入する価額を合意時の価額とすることを合意することができることも定められました(固定特例)。

もっとも、これらの特例を利用するためには、その合意について書面を作成することに加えて、経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可を受ける必要 があります。
なお、「経営承継円滑法」における遺留分に関する民法の特例が施行されるのは、平成21年3月1日からであり、前途の合意もそれ以降になされる必要があります。

 この「経営承継円滑法」を利用して、事業承継を円滑に進めることを検討されている方は 、ぜひ近くの専門家(税理士、弁護士等)に相談されるとよろしいでしょう。