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相続放棄について

 私は、夫と一人息子(小学生)と一緒に住宅ローンのある持ち家に住んでいました。先月、夫が自分の乗用車の中で練炭を焚いた状態で死んでいるのが発見されました。警察の調べでは睡眠導入剤も服用していたようです。

夫名義の住宅ローンの残高はまだ3000万円以上あります(連帯保証人はいません)。また、夫は10年以上前から私に内緒で消費者金融会社4社から借金を繰り返していたことが判明し、その残債務も300万円以上あります。

私や息子はこれらの債務を相続しなければならないのでしょうか。知人である建設会社社長から「相続放棄」という制度を利用するとよいと教えてもらったのですが、それはどのような制度なのでしょうか(旭川市・Nさん38歳・音楽療法士)。

 今回は「相続放棄」制度の意義とその際の注意点についてご説明いたします。


まず、被相続人(亡くなった人)の死亡によって相続が開始した場合、相続人は、次の3つのうちのいずれかの方法を選択することができます。

①単純承認 相続人が被相続人(亡くなった人)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ方法

②相続放棄 相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない方法

③限定承認 被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ方法

相続人には、自らの意思で相続しないことを選択することが認められています。これが②の相続放棄の制度です。この制度は相続財産が債務超過(借金等のマイナスの財産がプラスの財産を上回っている状態)である場合に相続人が意に反して過大な債務を負わされることを回避するために認められたものです。
相続放棄は、相続を放棄する旨を家庭裁判所に申述(しんじゅつ)することによって行います(民法938条)。そして、この相続放棄の申述は自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内になされなければならないのが原則です(民法915条1項)。

したがって、債務超過になっていることが明らかであるような場合には、相続放棄をするのがよいと考えられます。そして相続放棄が認められると、はじめから相続人ではなかったものとみなされ(民法939条)、借金を相続しないで済むことになるのです。

もっとも、この債務超過になっているかどうかの判断に際しては、2点ほど注意をしなければならないことがあります。

(1)住宅ローンについて
まず、住宅ローンについては、近時ほとんどの場合団体生命保険(いわゆる団信)に加入していることから、被相続人の死亡により残ローン債務は生命保険金で支払われゼロになります。このような場合には相続放棄を選択する必要がなくなる可能性があると思われますのでこの点を必ず確認してみてください。

(2)消費者金融会社からの借入について
次に、消費者金融会社からの借入については、債権者(貸主)から残債務の請求がきていても、実際には過払金(かばらいきん)が発生している場合があるので注意してください。過払金とは、簡単に言えば、貸金業者に「払いすぎたお金」ということです。法律上返す必要のないお金を返した場合、貸金業者に対してそのお金を返せと請求することができるのです。具体的には、7年以上の期間、消費者金融会社と取引がある場合には過払金が発生している可能性があります。

この場合には相続人は過払金の返還を請求する権利も相続していることになりますので、相続放棄をすることでかえって損をしてしまうことになる可能性があります。

 以上に照らせば、今回の相談者のNさんの場合、相続放棄という方法を選択する必要がない可能性も十分にあります。まずは、生命保険の点を確認すること及び消費者金融会社からの借入れについては弁護士に相談に行くことが先決であると思われます。

なお、今回の相談とは異なりますが、相続放棄をした場合に、生命保険を受け取ることができるかという相談を受けることがよくありますが、受取人が相続人になっている場合には、生命保険金は相続財産に含まれないので、相続放棄をしても、当然に生命保険金を受け取ることができます。