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破産した社員の解雇

 私は、建設会社を経営している者です。実はわが社のある社員が、破産宣告を受けるのではないかという噂が社内に広がっています。
最近は、サラ金業者やヤミ金業者などからの取り立ての電話が会社に頻繁にかかってくるようになり、その対応で他の社員が非常に迷惑しています。また、破産した社員がいるとなれば会社の名誉にも関わる問題だと思います。できれば、この社員を解雇したいのですが、解雇することはできますか。(Aさん53歳 建設会社社長)

 今回の相談者は、建設会社を経営する社長さんです。長引く不況の中、経営する会社の社員が何らかの事情で借金を重ね、最終的には破産宣告を受けるということも少なくはありません。

今回は、①債権者から社員への取立ての電話が会社にかかってくることや②社員が破産手続開始決定を受けたことを理由に、当該社員を解雇することができるのかについて検討してみましょう。

まず、①本件では、確かに、債権者からAさんの会社に取り立ての電話が頻繁にかかってきており、業務に支障が生じているといえます。

しかし、これは社員の責任というよりは、むしろ債権者の取り立て方法に問題があるのです。貸金業法という法律では、正当な理由がなく勤務先に電話をかけたり、訪問したりすることは許されていません。また、業者の監督官庁(財務局長もしくは知事)に報告をして営業停止や登録取消を申し立てることもできます。違法な取り立てに対しては、このように刑事告訴等も含めた毅然とした対応をすることが重要です。結局、このような債権者からの取り立ての電話があることは解雇理由にはなりません。

次に②破産宣告の点はどうでしょうか。破産宣告とは、債務者について破産手続を開始することの決定をいいます。平成17年の破産法改正により、「破産宣告」は「破産手続開始決定」という言葉に変わっています。

そして、破産手続開始決定を受けたことは、会社外のプライベートな事情であり、社員に債務が多かったとしても、保険会社の外交員や警備員など破産手続開始決定によって資格制限を受ける場合は別として、通常は会社の業務に支障は生じません。また、破産手続開始決定を受けても、通常の個人破産の場合は手続開始と同時に破産手続が終了するので、居住の制限などの法律上の拘束を受けることもありません。
 

したがって、破産を理由に社員を普通解雇または懲戒解雇にすることはできないのが原則です。もっとも、その社員が経理担当などのお金を直接扱う部署にいる場合は、適正を考慮して配置換えをすることは許容されると考えられます。そもそも、破産とは、経済的な失敗を社会が許してあげ、再チャレンジの途を与えるための制度です。

 Aさんも、解雇するなどと考えるのではなく、その社員の相談に乗ってあげるなどして、あたたかく見守ってあげてはいかがでしょうか。会社を支えているのは、一人ひとりの社員であることを忘れないでください。