このような場合、成年後見制度を利用したらよいという話を友人から聞いたのですが、それはどのような制度なのでしょうか。(Sさん 59歳主婦) |
現在、わが国においては、急速に高齢化が進行しています。 S さんのお母さんのように 認知症になり、判断能力が低下してしまった場合、
不動産や預貯金などの財産を管理したり
介護サービスや施設入所に関する契約を結んだり
遺産分割協議 をしたりする必要があっても、本人にはそれが困難な場合があります。また、自分に不利益な契約であっても判断ができず、 悪徳商法の被害 に遭うおそれもあります。
このような判断能力の不十分な方を保護するための制度として、成年後見制度があります。 成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神的疾病などにより、判断能力が十分でない方(本人)の権利や財産を守るための制度です。
そして、成年後見制度には、次の3つの類型があり、本人の判断能力の程度やその他の事情によって、どれに該当するのかが決まります。
①後見 本人に判断能力が全くないか、判断能力が欠けているのが通常の状態である場合、具体的には、日常的な買い物も自分ではできず、誰かに代わってやってもらう必要がある程度の場合です。
②保佐 本人の判断能力が著しく不十分な場合、具体的には日常的に必要な買い物程度は単独でできるが、不動産等の売買、自宅の増改築、金銭の貸し借りなど重要な財産行為は、自分でできない程度の場合です。
③補助 本人の判断能力が不十分な場合、具体的には、重要な財産行為は自分でできるかもしれないが、できるかどうか危惧があるため、本人の利益のため、誰かに代わってやってもらった方がよい程度の場合です。
S さんのお母さんの場合、日常の買い物も困難な状態ということですから①の後見制度を利用することになると考えられます。
後見制度は、誰が申し立てることができるのですか。娘である私が申し立てることもできますか。
成年後見の申立てができるのは、本人・配偶者・ 4 親等(姻族の場合は 3 親等)以内の親族その他法律で定められた人であり、もちろん S さんも含まれます。なお、本人に家族や親族がおらず、本人の福祉を図るために特に必要ある場合には市町村長も申立てることができます。
具体的な手続としては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをすることになります。そして、申立後、調査→鑑定→審判→審判の確定→成年後見登記という流れで手続きが進み、通常は3~4か月かかります。
成年後見人に選ばれた人は具体的にどのようなことをするのでしょうか。
家庭裁判所から選ばれた後見人は本人の財産を管理 し、契約などの法律行為を本人に代わって行います。なお、成年後見人等はその仕事を家庭裁判所に報告して家庭裁判所の監督を受けます。
成年後見制度のうち①後見を利用した場合に何かデメリットはありますか。
後見開始の審判があると、本人は選挙権及び被選挙権がなくなります(公職選挙法第 11 条 1 項)。また、会社の取締役に就けなくなります。
なるほど、なんとなくイメージがつかめました。もし、成年後見制度の申立てについて実際に相談したい場合、どんな機関に相談すればよいのでしょうか。
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