先日、ニュースを見ていると、札幌で、被害者参加制度の刑事裁判が行われたという報道がなされていました。被害者参加制度というのは、どのような制度なのでしょうか。 私は、昨年末,空き巣の被害に遭い、直後に、犯人は逮捕されました。私も、この犯人の裁判に参加して、被告人に直接質問をしたり求刑をしたりすることができるのでしょうか。 (Aさん・19歳OL) |
被害者参加制度とは、一定の犯罪の被害者などが、裁判所の決定により、公判期日に出席し、被告人に対する質問を行うなど、刑事裁判に直接参加することができる制度です。
意外なことかもしれませんが、従来のわが国の刑事裁判は、被害者が参加することはできず、裁判官・検察官・被告人・弁護人だけで行われてきました(なお、一定の場合に意見陳述をすることは認められていました)。その意味で、この被害者参加制度は、犯罪被害者の保護という観点からは、画期的な制度といえます。
具体的には、どのような事件の場合に、被害者が刑事裁判に参加できるのですか?
参加の申出ができるのは、
①殺人、傷害などの故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
②強制わいせつ、強姦などの罪
③自動車運転過失致死傷などの罪
④逮捕および監禁の罪
⑤略取、誘拐、人身売買の罪の場合です。
参加できるのは、被害者自身だけなのですか?
被害者が死亡した場合や心身に重大な故障がある場合には、
①配偶者
②祖父母・父母・子などの直系親族
③兄弟姉妹も被害者参加人になることができます。
被害者参加人として参加するには、どのような手続きが必要なのですか?
被害者参加人になるためには、検察官を通じて、裁判所に対し、刑事裁判への参加を申し出ることが必要です。
被害者参加人にはどのような権利が認められているのですか?
被害者参加人には、
①公判期日に出席すること
②検察官の権限行使に関し、意見を述べ、説明を受けること
③証人に尋問をすること
④被告人に質問をすること
⑤事実関係や法律の適用について意見を陳述すること等の権利が認められています。
また、被害者参加人は、それらの行為を弁護士に委託することができます(なお、一定の場合、弁護士の費用を国が負担する被害者参加人のための国選弁護制度もあります)。
今回、Aさんが被害に遭われた事件は窃盗事件であり、被害者参加制度の適用はありません。したがって、 Aさんが、この犯人の裁判に参加して、被告人に質問をしたり求刑をしたりすることはできません。
犯罪被害者参加制度の概要は以上のとおりです。何らかの犯罪の被害にあわれた方(またはご家族)で、この制度の利用を検討している方は、旭川弁護士会の法律相談センター等を利用して弁護士に相談してみるとよいでしょう。 |